自由主義 wikipedia|無料辞書
自由主義(じゆうしゅぎ)とは
政治思想の一つ。
リベラル・
リベラリズムとも言う。米国では建国以来の伝統的保守自由主義に対する
民主党・ニューディーラーの思想を指して「リベラル」と呼称することが多いため、議会や政府の干渉を拒否する伝統的な自由主義思想に対しては
リバタリアニズム(libertarianism)を用いることが多い。
◆ 語源
ラテン語liberは「社会的・政治的に制約されていない」「負債を負っていない」という意味で、英語のliberal(形:自由な)やliberty(名:自由)の語源となった。自由主義のliberalismはこれによる。またliberate(動:開放する)、liberator(名:解放者)、liberation(名:解放)も同じ語源による。一方でラテン語には母音に長短の区別があり、母音が短く「書籍」を意味するliber(記述は同じ)とは別系統であり、libr-の形で英語に入ったlibrary(図書館)、librarian(図書館員)がある
[神田外語大学「語源のたのしみ」第38回2004年1月 石井米雄[外部リンク]http://www.kandagaigo.ac.jp/kuis/culture/archive_31-40.html]。
◆ 種類
◇ 古典的自由主義
古典的自由主義 (Classical liberalism) とは、
ジョン・ロックや
ジョン・スチュアート・ミルなどのイギリスの
啓蒙主義時代の政治哲学を源泉とする思想である。彼らは
ホッブスの
社会契約論をもとに個人の生命 (Life)、自由 (Liberty)、財産 (Property)の3権利を
自然権として主張し、以前の神学から決別した形で社会のあり方を説いた。初期の自由主義は王政のイギリスで主張されたもので、必ずしも民主主義を主張するものではない。この場合の自然権とは政治的権利はともかく個人の権利として、国王であろうとも犯すことのできない最低限の権利を論じるものであった。その後のフランスなどの革命思想において民主主義、平等主義、共和主義、世俗主義などの要素が先に述べられた3権利の維持には不可欠であるとの主張が加わる。個人の自由の尊重、平等な個人の観念、寛容、法の尊重、権力の分立と議会制度、市場経済の承認といった価値観を主張する思想ともいえる。
特に、前者の最初期の自由主義をもって古典的自由主義という場合は
レッセ・フェール(放任される自由)を強調する思想となり、個人主義の哲学・世界観に基づく市場経済社会と、政治体制として最小限の政府(
小さな政府)を理想とする「
夜警国家」を主張する。
古典派自由主義経済学は、利己的に行動する各人が市場において自由競争を行えば、その意図しない結果として(「
見えざる手」)、公正で安定した社会が成立すると考える思想(→
アダム・スミス)である。経済的自由を重視する立場から、英語圏では
Economic liberalism(経済自由主義)や
Market liberalism(市場自由主義)とも呼ばれる
[アダム・スミスは、見えざる手は著書において1度しか使用しておらず特に重要視もしていなかったという主張がある一方で、個人の経済的自由の追求は社会の福利厚生に貢献するとの記述は何度も展開されるとの反論が存在する。]。一方で後者の後期の自由主義の場合は、放任される自由という観点とは逆に政府によって保護される権利という観点に立ち、国民の生活水準を守る目的での累進課税や保護主義、さらには公共機関においての宗教的服装を禁止など、自由との表現と矛盾するように見えるものである。これは日本語に明確に翻訳されていないLibertyがどのように解釈されるかでその政策的意味が変化することもあげられる。
◇ 現代の自由主義(リベラリズム)
現代の自由主義(リベラリズム、英:New liberalism, Reform liberalism)は、自己と他者の自由
[ロールズの第1原理では、各個人は、他者の自由と両立しうる限り、基本的な自由を平等に享受するとしている]を尊重する社会的公正を指向する思想体系のことをいう。
レッセフェール(自由放任)を基本原理とする古典的自由主義や
自由至上主義とは異なり、それが人々の自由をかえって阻害するという考え方が根底にある。現代において個人の自由で独立した選択を実質的に保障し、極度の貧富差における経済的隷属や個人の社会的自由を侵害する
偏見や
差別などを防ぐためには、政府による介入をなくしたり制限する(
無政府資本主義、
リバタリアニズム、
新自由主義)のではなく、政府や地域社会による積極的な介入も必要であるという考えに基づく。
「公正」とは、
ジョン・ロールズによれば「立場入れ替え可能性の確保」を意味する。これは人々に「社会のどこに生まれても自分は耐えられるか」という反実仮想を迫るものであり、機会平等と最小不幸を主張する。ロールズの格差原理では、格差ないし不平等の存在は、それをもたらす職務につく機会が平等に開かれており、かつ、それによって社会で最も不遇な人々の厚生が図られない限り、その存在は
公正ではないものとされている。
よって、リベラリズムは
積極的自由に基づく自己決定を推奨し、国家による富の再配分または地域社会による相互扶助を肯定する。すなわち、
市場原理主義では大企業が利益を最大化する一連の行為のために、失業問題や構造的
貧困や
環境問題などさまざまな弊害・社会問題が生じ、それは古典的自由主義の「意図に反して」人々の社会的自由をかえって阻害しているとし、古典的自由主義を修正する思想である
[なお、政府ではなくローカル共同体などの中間集団による再分配と相互扶助を主張する思想としてアナキズムがある。]。
日本語では
消極的自由を重視する古典的な自由主義とのニュアンスの違いを表すため、また、混同を避けるためにあえて自由主義ではなく
リベラリズムと呼ばれることが多い。英語圏では
Social liberalism(
社会自由主義)と表現される。社会的自由を重視することから、
社会民主主義との親和性がイメージされることも多い。ただし、事後的な社会保障としての
福祉国家論を主張した
社会民主主義とは異なり、
個人主義に信頼するロールズのリベラリズムでは、人的資本を含む生産手段の広範な分散的保有の事前的な制度的保障が主張されている
[平野仁彦ほか (2002)「法哲学」有斐閣]。
◆ 歴史的起源とその展開